演舞場発 東寄席 第二十四回

演舞場発 東寄席 第二十四回 2017年3月29日(水)

第24回『落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in新橋演舞場』にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。ここ新橋演舞場地下『東寄席』には2回目のご出演となります、柳家喬太郎師匠をお迎えいたしました。
『第24回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』柳家喬太郎

超売れっ子の噺家の柳家喬太郎師匠。毒舌に卓越した演技力も加わった魅力あふれる高座は圧巻です。今回は師匠自らのリクエストで艶噺を披露くださるとのことで満を持しての会となりました。高座をお楽しみいただきながら、今宵も新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意致しました酒の肴と、神奈川県の銘酒、旬の江戸東京野菜で心地良い春の宵(酔い)をお届けました。
 

本日の落語演目

開口一番『狸札』

本日の開口一番は入船亭辰のこさん。「前座は休みなんてありません。かれこれ4年、1400日ほども休んでいませんので、ベテラン前座」と早くも客席を和ませます。最近では苦労の甲斐あって、二つ目の昇進が決まったそう。ですがしばらくご無沙汰していた実家から「大きくなったら公認会計士になりたい」と幼少時代の辰のこさんが母親に語りかけている手作りDVDが届いたそうで、辰のこさんのお母様も強者のようです。

そんな辰のこさんの演目は「狸札」。狐、狸は化けた馬鹿したで人間を困らす話しが多いものですが、今宵の狸は愛らしい。人間の子どもにいじめられていたのを助けた親方のもとに恩返しに、お札に化けたという噺。ところがこのお札、裏に毛が生えて裏起毛だったり、ノミが付いたり、上下逆さで目が回る・・!愛嬌ある仔狸が見えるようで可笑しくて、会場は目尻が下がるような幸せな笑顔に包まれます。

 

一席目 『錦の袈裟』

柳家喬太郎さん

続きまして、客席からの盛大な拍手と掛け声の中、今宵の主役の柳家喬太郎師匠のご登壇です。 高座から見える客席に並ぶお酒とお食事を見渡して「何がメインだかさっぱりわからない」と笑みを浮かべて会場を沸かせます。「通常の寄席と違って、余裕がありますな。これだけの金を払っているんだからという感じがね。我々のほうが一段高いところにいるのに、確実に利用されている。」と毒づいてたちまち客席は大笑い!
そんな中、話題は趣味・道楽について。噺家の趣味にも釣りや鉄道やスポーツ好きなど多種多様ある中で、特に相撲好きも多いようで、東京の場所があれば、よく足を運ばれる方もいらっしゃるそう。歌好きの落語協会の会長、柳亭市馬師匠を「落語協会の会長をしながら日本歌手協会に入っているんですね」なんてネタにしながら、柳亭師匠が相撲見物に行って前列で観戦しているのをテレビで見たのを「いつか試合中に、内ポケットに入れた携帯をブルブルッと鳴らしてびっくりさせたところで”送信者はわたし”なんていうことをやってみたい」なんて悪い笑みを浮かべる。相撲といえば、生前の小さん師匠も相撲がお好きで、鈴本演芸場の楽屋で、場所柄、姿見を通して相撲をごらんになっていたそうですが、それを「死ぬまで勝敗を逆にしてみてたんだろう」とまた、師匠をネタにまた悪態づく。勢いづいて、この道50年のさん喬師匠に至っては「ウルトラマンセブンと同期。一緒に前座の仕事をしたのかな、セブンとうちの師匠が一緒に太鼓叩いてたのかな、なんて想像するともう!」なんて錚々たる師匠を憎いネタにして大連発!!もう会場は抱腹絶倒。さすが師匠の枕は終始笑いが堪えません。

昔の趣味道楽といえば今でいう繁華街に風俗街の吉原の花魁がよく噺にあります。
「先程の落語では狸が登場したがああいうものは人を化かすときに尾でだます。けれど花魁は口でだますから、尾(お)は、いらん。だから”おいらん”が語源なんです」と語れば、会場は忽ち「へぇ!なるほど」と歓声が。納得したところで、すかさず「嘘に決まってるじゃない」と突き放し大爆笑。こんなやりとりですら堪らず笑いで釣られていってしまいます。そう、この押して引いての独特の駆け引きが師匠のなせる技。
観客席はまるでほろ酔い。たどり着いた一軒の明かりのように見えるものは師匠が織りなす色めいた繁華街。のれんをくぐれば、たちまち演目『錦の袈裟』に。

縮れの長襦袢で吉原で派手に遊んだという隣町の連中から自分の町内の衆が馬鹿にされたと聞いて、吉原でもっと派手な遊びを企てます。揃いで仕入れた錦の反物を褌(ふんどし)にして派手に花魁の前で度肝を抜かせようという算段。数が足りない阿呆の与太郎の分は女房の入れ知恵で袈裟輪のついたお寺から拝借。なんとも節操無い色噺ですが、こういう笑いがまた堪らないものです。「ぬしはケサはかえしません」といったサゲまで会場は「ううん、もう~!」と思わず声をあげて痺れる一席でした。

〜 仲入り 〜

二席目 『紙入れ』

柳家喬太郎さん

仲入り挟んで二席目も盛大な拍手から始まります。
仲良く並んだ会場を見つめて「親子は一世、夫婦は二世、主従関係は三世」と語り、「間男は止せ」と加えればそれまで感動して聞き入りそうになっていた会場がまた爆笑!浮気、不倫なんて言葉に加えて最近では「ゲス」の名称をよく聞きますが、落語はこれを「間男」とよぶ。そう言われるとどこか憎めない男であるのが不思議です。
次の演目はこれまた一席目とは色を変えた憎めない間男が登場する艶噺、『紙入れ』。
気の小さい新さんが、亭主が留守の間、女将さんに呼ばれて誘惑に負けて男女の仲に。女将になりきる師匠がいやらしく銀鼠色の羽織をそうっと肩まで下げて、会場中に妖艶な目配せ。意外にもちらりと裏地が桃色なのを見るとその仕掛けに会場はヤラれた!とばかり笑いが止まらず、歓声も沸き起こります。時々甘えて羽織の紐を回してみたり、流し目をしたり指を加えてみたりと、見てはいけないようなものを直撃してしまった衝動と大爆笑。その演技力に”やっぱり喬太郎師匠の女形は最高!”とお腹をおさえながら客席からも漏れる程、酔いどれた夜になんとも最高のエンターテイメントで盛り上がる二席でした。
 
 


 
味覚を楽しむ

今宵の演舞場の献立も、春を感じる旬の味覚をご用意。筍や蕗、ホタルイカや鯛や蓮根など、海、山、里の恵みを香りを大事に調理してお楽しみいただきました。
 


日本酒を楽しむ会

○江戸東京野菜「五関晩生小松菜」

東京は青梅で有機農業を営むTYファーム。4月には天王洲アイルにカフェ&デリカテッセン「NOZ」がオープンする活躍ぶり。そんなTYファームのこだわりの江戸野菜、本日は3回目の登場の五関晩生小松菜。野菜の収穫が難しいこの時 期にして、今回のものが一番肉厚かつ、筋張らない出来栄えで、野菜コンシェルジュの島田さんも唸るほど。肉厚だから、今宵の煮浸しも出汁をしっかり含んでいて春の味わいを存分に楽しめます。三度いただいても季節によって味覚を変えて楽しめます。島田さんはほかにも東京にちゃんと根付いて歴史がある江戸東京野菜をこれからも皆さんに楽しんでいただきたいとその魅力を伝えました。

酒を楽しむ

お馴染み、神奈川県厚木市の酒店「望月商店」の望月さんから紹介いただいた日本酒は同じく神奈川県の銘酒。大矢孝酒造のお酒、文政十三年創業で187年の歴史ある蔵ですが、八代目の若き蔵元が平均三十代の蔵人とともに酒造りに取り組んでいます。伝統と、若いアイデアの融合がセンスの良い酒づくりに活かされています。大矢孝酒造はこれまで「昇龍蓬莱」のお酒が看板商品として知られていましたが、気鋭の若い蔵人が同蔵で生んだのは今宵の「残草蓬莱(ざるそうほうらい)」。第93回南部杜氏・純米酒部門にて1位を獲得した今後も期待高まる酒造です。
 

本日のお酒のご紹介

○残草蓬莱 純米酒
残草蓬莱のスタンダードな純米酒は、さわやかな飲み口でどのお食事の味わいも邪魔しないバランスの良い味わい。

○残草蓬莱 出羽燦々 純米吟醸酒
純米酒のバランスの良さと引けをとらないこちらもスッとさわやかな味わい。抜けがある上に、どこか甘みを膨らませてそよ風のように去っていくところに、もう一杯と味わいたくなる。

○残草蓬莱 男の夢 純米吟醸槽場直汲生原酒
なんと日本酒にして驚くべき味わい。フルーティなだけでなく、スパークリングワインをいただいているよう。斬新な一酒。

大矢孝酒造 店主

○昇龍蓬莱 生もと 純米生原酒
最後に店主の手でお客様の元に注がれたお酒は、深い愛情を感じる奥深い味わい。ほんのりとした春の味わいが今宵のラストを飾ります。


お楽しみ抽選会

お楽しみ抽選会

今宵を締めくくりは、こちらも恒例となりました抽選会です。本日も様々な景品を前に、一喜一憂の声があがり大盛況の内、幕を閉じました。


さて、次回は4月28日(金)、落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会。春風亭一朝師匠の独演会です。どうぞお楽しみに。

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