演舞場発 東寄席 第三十一回

演舞場発 東寄席 第三十一回 2017年10月12日(木)

 本日は『第三十一回落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』にお越しいただき、誠にありがとうございました。
『第三十一回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』柳亭小痴楽、神田松之丞 二人会

  三十一回目の今夜は二年ぶり、二つ目二人会の開催。三代目柳亭小痴楽さんと講談会の若きホープ神田松之丞さんにご出演いただきました。落語芸術協会の若手ユニット『成金』でも非常に活躍中のお二人です。『演舞場発文化を遊ぶ』企画本来の目的である若手育成に立ち返り、いまノリに乗っているお二人の粋で味のある話芸をご堪能いただきました。
 また日本酒を楽しむ会ではこちらも若き醸造家が歴史ある加茂錦酒造で作る新たなブランド『荷札酒』を。新しい時代の伝統文化の担い手の話しを聞きながら、若き醸造家の思いを込めたお酒と、旬の食材を盛り込む料理に舌鼓。今宵の『東寄席』をもうひとたびご堪能ください。

開演

本日の演舞場のお料理

 開演18時。テーブルには秋を彩る特別献立と、小松菜と蛸の山葵(わさび)和え、それから亀戸大根の若菜油炒めが小鉢に添えられます。旨い肴を箸で摘み、加茂錦酒造の純米大吟醸生詰原酒とともにちびりちびりはじめると、早くも愉快なほどにほろ酔い気分を味わいます。辛口の酒は口の奥のあたりにふんわりとした芳醇な甘みを感じる奥行きのある味わい。それこそがこの無濾過仲汲みで成し得た作品です。会場に早く来て始まりを待つお客様のお顔が旨い食事とお酒で笑顔へと変わります。

江戸東京野菜

 この会で紹介している江戸東京野菜は今宵で15回目を迎える、TYファームの無農薬野菜。先付けで使われた亀戸大根は一本の大根を大きくするために間引いていくときに出る間引き菜を使った逸品。ある種、工夫から生まれた食材ではありますが端くれをこれっぽっちも感じさせない旨味を味わえます。無農薬で大切に育てられたからこそ生まれる素材としての「愉しみ」なのかもしれません。バターナッツかぼちゃは瓢箪のような形をしたかぼちゃをスライスして素焼きしたもの。一見、手を加えない調理法ですがそれだけで驚くほど濃厚な滑らかさと甘みに出会えるといった珍しい体験に食卓を囲むお客様の驚きと喜びの笑顔が溢れました。

本日の落語演目

一、 落語 柳亭小痴楽『一目上がり』

 出囃子『将門』が鳴り響くと、落語会若手のホープの登壇に拍手が沸き起こります。東寄席、柳亭小痴楽さんの初登壇です。高座につくなりうなじが見えるほど座布団の位置よりも深く深く丁寧に頭をさげます。顔をあげ「ご来場ありがたく御礼申し上げます。今日は第31回めなんででございましてね、長く続いている会でございます。今日は”特別企画”で神田松之丞さんと柳亭小痴楽が来るという、ね。」普段はさん喬師匠、扇遊師匠、一之輔師匠、菊之丞師匠・・・と錚々たる顔ぶれが並ぶ高座に二ツ目のお二人が“特別企画”のタイトルで出迎えられてしまったことに「頭下がる」と自虐ネタで笑わせて会場がどっと湧かせます。若手とはいえ古典落語さながらの江戸っ子口調。流れるような口ぶりで聞かせ途中「スッ」と入るうまい間の息継ぎ。安定した存在感を見せます。

 「えー、ここ新橋演舞場ということで、歌舞伎を見たことない人いますか?(観客席の挙手を見て)ああ、結構いるんですね。どの面下げて来たんですか?」歯に衣着せぬ物言い、遠慮ない冗談は亡き父・柳亭痴楽師匠も超える潔さ。そうかとおもえば「最近なんですよわたしも。親近感を覚えます」と一昨日見に行ったワンピース歌舞伎の話しを嬉しそうに語って”証拠の”ワンピース歌舞伎の記念の手ぬぐいを広げる。「わたしはね、こういうヨイショができるんですよ。松之丞さんはこういうことできない。松之丞さんは別の劇場見に行ったらしいですよ。」と同じ舞台に立つ仲間の名前で落として、会場には止まらない爆笑の波が押し寄せました。

  • 柳亭小痴楽
  • 柳亭小痴楽
  • 柳亭小痴楽

 そうして会場をグッと引き寄せたところで一席目。厚顔無知な男、八五郎が登場する古典落語『一目あがり』がはじまります。
 ご隠居の床の間の掛け軸を観た八五郎。ご隠居の「結構な賛(さん)ですね」の一言でもいえば回りは少しは八五郎を見直すだろうという言葉を聞き、別なところで「結構な賛(さん)ですね」と軸を褒める。すると「これは賛(さん)ではなくて“詩(し)”」と言われ、ほかで「結構な詩(し)ですね」と褒めれば「これは“悟(ご)”」だと言われてしまう。
 流れるようなトントン落ちのお噺に、個性あふれる心地よい抑揚と絶妙なテンポ。会場は立て続けに起こる小痴楽節に終始笑いが止まらない様子でした。どっと沸かせて一席終えた小痴楽さん、立ち上がるかいなや座布団からずっこけてまさかの二段落ちに。予期せぬ出来事にまたも会場大笑い。笑顔が絶えない一幕でした。

一、  講談 神田松之丞『赤穂義士伝 荒川十太夫』

神田松之丞

  近年落語家を目指す人は東京・大阪合わせて800を超えていくほど増えているようですが、講談師とは実に東京・大阪合わせてもその10分の1ほどに満たないそうです。特に、男性の講釈師とは減少傾向を見せており、まさに絶滅危惧種と自ら名乗る講談界の風雲児、それがまさにこの神田松之丞さんです。絶妙なタイミングで張り線と扇子を両手でパパンッッ!!と鳴らしながらオチをつけつつ講釈する姿などまさに印象的!!
 独特の響きある低音ボイスで「絶滅危惧種・・貴重なものを見ていると頭で変換すれば、ああ松之丞おもしろいと脳内変換されていくんです」と言って自ら売り込み観客席をどっとわかせる。講談界最年少とは思えないその技量と凄み。演目まで会場は笑いが止みませんでした。
 講談とは実に4500も講釈があるなかで、そのうち300が赤穂義士の話しが占めている。それほど人気があるのは吉良上野介の討ち入りシーンに限らず、なにぶんこの忠臣蔵の話しとは日本人の好む美徳が多分に含まれているからではないでしょうか。たとえばあの討ち入り前日、「これから敵討ちなどに行く」などと一言も告げずに自分の家族や友人たちに会いに行ったあの場面。そんな覚悟のあり方といったように全話に“別れ”が描かれているところなどまた日本人にはぐっとくる部分と以前どこかの会で松之丞さんと語っていたのも印象的でした。

神田松之丞

  今宵は赤穂義士伝が語り継がれる日となった後の話し。ここで登場するのは浪士たちの介錯人として立ち会った荒川十太夫の話し。死を目前に恐れることもなく堂々と向きあう浪士の姿に得も言われる気持ちとなる十太夫。お役目とは思っていたけれど堀部安兵衛を介錯する段になったとき安兵衛の口から「お役目ごくろうにござる。閻魔の土産話に名前とお役目を教えてくれないか。」といわれると唾と飲み込み、荒川十太夫の脳裏にふと、「最後の介錯人が自分のよ うな身分の低い徒侍とはいってはいけない」と浮かび、咄嗟に「物頭役」といって自身の役職を偽った。その後、安兵衛がありがたがって切腹をしたが、十太夫の中では悔いが残ってしまう。それが理由で、普段は五両三人扶持の徒侍といった身分で楊枝を削る仕事をしてお金を稼いで忌日の墓参りだけはせめて物頭役の振りをして、安兵衛の墓参をしたという話し。

なんと律儀な男の話しをそれはそれは丁寧に慎ましく講釈が響く。しんと静まる会場がその緊張感を固唾を呑んで見守っていた。

神田松之丞

七回忌のこと、ついにその様子を伊予松山藩十五万石の主、久松隠岐守(ひさまつおきのかみ)の家来、杉田五左衛門(すぎたござえもん)に見つかってしまい、久松隠岐守に報告され、殿自らが直接調べることとなる。身分を偽ったことが知れてしまい自白を求められている場面、実に見せ場である。後ろ手に縄を縛られた荒川十太夫は言い訳などしない様子で「即刻、首をはねていただきとうございます」とだけいう。 松之丞さんの目の奥に荒川十太夫の魂の叫びのようなものを感じたからか、静けさに背中を屈めるように丸めた松之丞さんから響く低い声に。それに共鳴したのか、なにかドクドクと自分の心音と対峙するような臨場感。客席では音を立てぬように涙を吹くシルエットがぽつりぽつりと浮かびます。時代の交差を間近にして不思議な一体感のようなものを感じるようでした。赤穂義士に劣らぬ武士道を備えた荒川十太夫は謹慎ののち、本物の「物頭役」として出世を果たすこととなります。ああ、だからやはりこの話しは日本人の心を掴んで離さないのだとますます感動して拍手が湧く。一人の男の人生をかけたその講釈に会場中が感動で震えていました。凄い時間を語り繋いだ神田松之丞という講釈師に熱い感謝にも似た拍手と掛け声が鳴り響きました。

『第三十一回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』柳亭小痴楽、神田松之丞 二人会

一、 落語 柳亭小痴楽『干物箱』

柳亭小痴楽

  一席目で会場を大爆笑で包んだ小痴楽さんが登壇するなりもう顔を見ただけで観客席からは笑い声が。「ね、二席目も神田松之丞さんが良かったでしょ?あんなしゅっとシメちゃってね。それではあたしは古典落語1791席の一をやりますよ」なんていって冗談で沸かせます。

二席目の演目『干物箱』は、厳しい親父と遊び好きの若旦那といった親子が登場する話しですがその枕では柳亭小痴楽さんの亡き父・五代目柳亭痴楽師匠の話しで沸かせます。

「うちは普通の夜遅くまで帰ってこないサラリーマンのお父さんとは違って昼間にずっとオヤジがいましてね。」こんなふうに語りはじめ、父親が噺家といった想像もつかない普段の生活にどんなものだろうと会場が期待を寄せます。
たまに顔合わせて他人行儀に“どうも”なんていって喫茶店に行ったりしてたと他愛の無い小痴楽さんの知る素顔を耳にして客席は目尻を下げてその話しをにこやかに聞き入ります。
「普通の親っていうのは友達と喧嘩しちゃだめとか言うもんですが、うちはそうじゃない。外の学校の知らないやつはボコボコにしてもいい。だけど同級生は明日会う仲間だから喧嘩をするときは仲直りをする算段までつけてから喧嘩をしろって。そんな冷静に喧嘩なんてできるかって話しです。で、外の知らないやつも素人任せに加減わからずボコボコにしたりして死なせちゃいけない。だから結局喧嘩しちゃいけないんだって。」結局“喧嘩しちゃいけない”というゴールは他の家と同じであるのにその話しひとつが教訓のようでいてどこからか与太郎やはっつぁんが飛び出すんじゃないかというスパイスがきいていて、思わず観客席からはけたけたと笑い声が響きました。

柳亭小痴楽

  地方公演に出ればと公演初日にもらったお給料をその日から一週間まるまると散財。申し訳なさそうに帰宅すると使い込んだ金のうちくしゃくしゃに丸めた一万円札二枚を母親に差し出し「前座か!」と怒る母親の前で申ジャンプして小銭の音をさせる父。
煙草を買いにお使いに230円貸してなんて子どもにいって、コーラもつけてあげようと追加に120円も貸してくれなんていう父。まるでどの思い出も落語に出てくるような世界のような父との日常の断片が小痴楽さんの思い出に刻まれていました。

そうして始まる古典落語の演目『干物箱』は物まねと入れ替わりの話し。

柳亭小痴楽

 こんな形で父と子を枕であえて登場させた小痴楽さん。父であり五代目柳亭痴楽の別の顔をこの枕で一幕を語りました。一人間として何か、この枕に出したことで超えた付き合いがこの親子の間に生まれたような特別な時間を見たようでした。そうしてまたこの演目が彼自身の糧となり要素として小痴楽さんの中にぐっと込められているような気がしたのでした。 「ありがとうございました。」また最後はあの深々とした項がみえるほどのおじぎ。伝統が次の世代へ受け継がれているのを見守りながら、堂々と高座を降りていく柳亭小痴楽に大きな笑いと拍手が送られました。

日本酒を楽しむ会

本日の日本酒「加茂錦酒造」さんのお酒

演舞場の美味を楽しむ

  124年と歴史のある新潟県の加茂錦酒蔵。その老舗の酒蔵で若き醸造家が果敢に挑んで提案している『荷札酒』が今、注目を集めています。この会でお馴染み望月酒店さんが紹介してくれたのはその醸造家である田中雄一さん。年齢は24歳。酒づくりに年齢は問いませんがあまりの若さに思わず会場は驚きの声が上がりました。酒造りをはじめて4年ですが、その出来栄えは雑味を残さず繊細で味わい深く、どことなくセンスの良さを感じさせます。 田中さんが酒造りを始めたのは父親が10年ほど前にこの酒蔵を親戚から継いで譲り受けたとき。新潟の大学でアプリの制作など電子工学を学んでいた田中さんでしたが、当時日本酒の研究をしていた父親に付き合って味わった獺祭の美味しさを知りたちまち日本酒の魅力に魅せられたのだそう。電子工学とお酒。違う畑で勉強をしていたのになんとも不思議な縁ですが、現在はスマートフォンですべての樽の温度管理をしているという斬新な取り組みをしているのですから案外縁とはうまくできていますね。新しい風がこの日本酒という伝統の根深い世界にも吹き始めたのを感じさせます。

演舞場の美味を楽しむ

 『荷札酒』が他のお酒と違うのは、商品ラベルを作らずひとつひとつの同じ規格の札に手作業でハンコを押してボトルに貼り付けています。「お酒は治験的に作っているとその味 の変化に気付くんです」という田中さん。まるで標本を作るかのようにタンクごとの変化を観察して感じながらその一瓶に繊細な味わいを表現しています。デジタルとアナログ。二つの融合を活かすのは彼ならではの発想です。まだ荷札酒は新潟では一本も販売しておらず、特約店限定のお酒。 その奥深い味わいを愉しめるとあって非常に今宵いただく四種は貴重な体験です。四種すべてが精米歩合50%を超える「純米大吟醸」というこだわりよう。その酒の奥深い美味しさに今後の加茂錦酒蔵さんの酒造りを見つめていきたいという期待が寄せられます。それでは本日いただきました四種を紹介します。

お酒を楽しむ

(写真右から)

○荷札酒 純米大吟醸 生詰原酒
本日一酒目のお酒は無濾過・仲汲みの生詰原酒。実に蔵元の思想といわれている仲汲みは飲み口は辛口ですが奥のほうに麹米・山田錦と掛米・秋田こまちを掛け合わせた芳醇な香りを携えたお酒です。雑味なくナチュラルな味わいが後をひく美味しさです。

○荷札酒 純米大吟醸 雄町
米を麹米・山田錦と掛米・雄町でかけ合わせている二酒目の酒は辛口ですがスッと一酒目より美しく消える絶妙なバランス。フレッシュでよりやわらかな甘みを感じる一酒です。

○荷札酒 純米大吟醸 槽場汲み
3本目は搾りたてそのままのシュワシュワとした発酵の旨味を感じます。最近こういったガス感のあるお酒が流行っていることもあり挑戦された一酒。淡麗でフレッシュな味わいが特に女性のお客様には人気のようでした。

○荷札酒 月白 山田錦四十%
荷札酒の中で一番淡麗というもの。また精米歩合も40%まで磨きあげています。すっきりと飲みやすい綺麗な味わい。四種のトリをつとめる味わいをより決定付ける一酒です。

お楽しみ抽選会を楽しむ

  • お楽しみ抽選会
  • お楽しみ抽選会

 最後はお馴染みとなりました、お楽しみ抽選会。加茂錦酒蔵特製の景品や今宵会場を沸かせた小痴楽さん、松之丞さんのお二人の記念グッズなど豪華な景品で大盛り上がり。また、特別に小痴楽さん、松之丞さんも抽選に参加したり、お二人のサイン色紙が当選した方は記念撮影ができたりとファンにはたまらないひとときでした。この会を終えたお二人から一言ずつコメントをいただきましたのでご紹介します。

柳亭小痴楽

「皆様、最後までご辛抱いただきまして本当にありがとうございます!温かいお客様に助けられ、楽しく落語を演らせて頂けました!これからもドンドン若手を呼んで頂けますように、そして真打ちになって呼んで頂けました時には、お酒に負けないくらいに、味のある落語が出来てますよう頑張って参ります!
それまで皆様、東寄席に通ってくださいー!なくならない様にー!(笑) 是非また呼んでください!!」
 

神田松之丞

「この度は『東寄席』参加させて頂いて、ありがとうございました。講談師の神田松之丞です。
この『東寄席』は落語家の方も第一線の方ばかり。講談界ではなんと、人間国宝の一龍斎貞水先生もご出演されたという事で。
そんな中、若輩の私も参加させて頂いたのは光栄でした。
同時に、自分で大丈夫であろうかと心配もありましたが、お客様が非常にあたたかく杞憂に終わりました。
ご一緒した小痴楽兄さんもとても頼ましく、ありがたかったです。
講談を聴く機会も、なかなかないかもしれませんが、歌舞伎や落語同様、皆様に応援して頂ければ幸いです。」
 

  • 本日の演目
  • 柳亭小痴楽・神田松之丞

 さて次回は2017年10月26日(木)、東寄席『柳亭市馬独演会』です。どうぞお楽しみに。

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