演舞場発 東寄席 第十七回

演舞場発 東寄席 第十七回 2016年8月27日

2016年8月27日、ここ新橋演舞場の地下食堂「東」では、第十七回目の東寄席『落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会』が開催されました。
『第17回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』三遊亭兼好師匠 サラリーマン生活に終止符を打ち、落語界へ単身乗り込んだのは27,8歳の頃…。幾多の苦難を乗り越え、今や『落語界の革命児』の異名を持つに至った人気落語家・三遊亭兼好師匠をお迎えいたしまして、 軽快で鮮やかな語り口とその多才ぶりを体感していただきました。

まずは開演まで、新橋花柳界で育まれた日本料理を詰め合わせました会席弁当とお酒をお楽しみいただきます。

会席弁当とお酒

江戸の伝統野菜と
八海山の泉ビールで乾杯!

東寄席イベントでは、毎度4種のお酒が振る舞われるのが習わし。
本日の1つ目のお酒は、きめ細やかな泡と混ざり合う柔らかな琥珀色が美しい八海山の泉ビール『WEIZEN(ヴァイツェン)』。
すっきりとした軽い喉越しを楽しんでいるとフルーティーな香りが鼻を抜けていきます。苦味の少ないやさしい味わいにお客様からも「飲みやすい!美味しい!」と感動の声が。 お一人に1本(330mL)振る舞われた小瓶をあっという間に空けてしまう方もいらっしゃいました。

TYファームの野菜コンシェルジュ・島田さん

さて、お料理はどれから頂こうかしら…なんて迷っていると、TYファームの野菜コンシェルジュ・島田さんがバリトン域の優しい声で、『寺島なす』の歴史や名前の由来を説明してくださいました。
今、東京スカイツリーが立っている辺りで江戸時代にはたくさん作られていたとか。ただそれ程大きくならないうえに足が早く、さらに関東大震災に見舞われるという不運により、種も育てる人も一旦は廃れてしまった江戸野菜だったそうです。
前回の東寄席でとても好評だったということで、今回は朝採れのお茄子を素材本来の味が一層際立つ『煮浸し』でお楽しみいただきました。

三遊亭じゃんけんさんが開口一番

本日の落語演目

開口一番『つる』

写真を撮ったり乾杯したりお仲間とアイコンタクトで頷きながらお料理を楽しんだり、と思い思いに過ごされているお客様の様子に自然と笑みがこぼれます。
そんな中、演舞場サービス・内藤さんのご紹介で壇上に上がるのは、三遊亭兼好師匠の2番弟子・三遊亭じゃんけんさん。深縹(こきはなだ)色のお着物が初々しくも勇ましい今日のじゃんけんさんによくお似合いです。
演目は上方版の『つる』。物知りが教えた冗談の珍説をアホな男が頭から信じ込み、その知識を披露しようとして失敗するお話です。
じゃんけんさんは、今年の3月12日に両国寄席で初高座をつとめあげてまだ半年という若手の噺家さんですが、ちっともそんなことは感じさせない堂々とした語り口。「明るく楽しい落語家を目指したい」という自己PRにも深く納得。会場によく響くお声も、今回の演目に『つる』にぴったりでした。

「皆さまがJALに見えて参ります。」とつかみを決めるさすがの兼好師匠

一席目『一分茶番』

ライトの加減でしょうか。じゃんけんさんの後、間もなく登壇された兼好師匠の羽織が光沢ある白練(しろねり)色に見え、いつにも増して上品なお姿と笑いへの期待に胸が昂まります。
「まずは椅子を舞台側へ向けてください。横を向いたままですと皆さまのお首がくたびれてしまいます…」師匠の優しい言葉に従い椅子の向きを変えておりますと、体も良い塩梅にほぐれてきます。 「こちらから見ておりますと、皆さま何だかJALみたいな形に見えてまいりますのでねぇ。」とJALマークのポーズを取られる師匠にリラックスした会場は大爆笑。 開口一番お弟子さんの演目からの見事なつかみに魅せられた200余りの目と耳が、兼好師匠の一言一句を漏らすまい!と壇上へ向けられます。

一席目、白練色の羽織を纏って登場の兼好師匠

歌舞伎やお能と落語の違いを、実際にセリフを再現しながら面白おかしく教えてくださったり、クスリとも笑ってもらえなかったこれまでの体験談で爆笑をとったり、と兼好師匠の多才ぶりには感動するばかり。
そんな流れでの一席目は『一分茶番(いちぶちゃばん)』。権助芝居(ごんすけしばい)とも言われる古典落語の演目の一つで、田舎者の権助が雇われで素人芝居・鎌倉山の舞台に上がりますが、馬鹿正直者がゆえのハプニング続出で芝居になりません。 ラストのサゲまで生き生きと描かれる無骨な主人公・権助は、江戸っ子としては珍しいキャラクター。兼好師匠の通常の語り口と権助を演じる田舎方言、この2種の語り口の調子が本当に素晴らしくて、あっという間にお噺の世界へ引込まれました。どこからがお噺の世界だったのか……はて。

銘酒八海山酒造さまご提供の八海山4種

二席目『応挙の幽霊』

銘酒八海山酒造さんから振る舞われる4種の『八海山』で、会場のお客さまもほろ酔い良い気分。ここまでの師匠の鮮やかな語り口に、その楽しい気持ちがどんどん膨らんでいくのがわかるほどに温まっています。
「皆さまお食事もゆっくり楽しんで、私もそんなに長くは喋りませんので…」なんて壇上から優しく語りかけてくださる師匠。会場から「たっぷり!たっぷり!」と声がかかると「では2時間ほど…」とすかさず笑いをとっていきます。

二席目、兼好師匠
会津若松ご出身の兼好師匠は、やはり身近な日本酒がお好きとのことで乾杯もビールではなく日本酒だとか。「日本酒はこわい飲み物ですからねぇ〜どこにも引っかからない、スッと入っていってしまう。」とお話くださるその姿は、まるで本当に日本酒を飲んでいるかのよう。
二席目『応挙の幽霊』の中でも、『八海山』を登場させるなど気の利いた見事な技に会場は大きな拍手と笑いで満たされました。


二席目、兼好師匠

さぁさぁ、二席目は古典落語『応挙の幽霊』。古道具屋が安く仕入れた幽霊の掛け軸を、訪ねて来たお得意の旦那に高値で売り、掛け軸の前で祝い酒を飲み始めます。 ところでこの掛け軸の女幽霊。なんとも美しいじゃないか、と古道具屋は一目惚れをしてしまう。すると、掛け軸から女幽霊が抜け出て一緒に酒を飲み始めます。なんでも酒を手向けお経を読んでもらったのが嬉しくて思わず出てきてしまったのだ、と。そして自分は応挙が描いたのだと言う。酒を酌み交わしながら夫婦となる約束をするが…というお話。
まるでそこに女幽霊がいるかのような兼好師匠の演技と、ラストにかけて幽霊役の師匠が重ねて唄う歌が笑いを誘い、なんともお見事でした。

東寄席未体験の方には、『落語界の革命児』の異名を持つに至った兼好師匠が次回ご出演の際は是非、生でこの感動を体感していただきたいです。

新潟の銘酒八海山酒造・東京営業所所長余田さん

本日の日本酒を楽しむ会

今回の日本酒を楽しむ会は、新潟の銘酒八海山酒造・東京営業所所長の余田さんにお越しいただき、八海山の地ビールと酒造りへのこだわりをお話いただきました。
ご提供いただいた日本酒は『八海山 特別本醸造酒』『八海山 雪室三年貯蔵 純米吟醸酒』『八海山 吟醸酒』の3種。中でも真っ白な瓶が印象的な『八海山 雪室三年貯蔵 純米吟醸酒』は、雪国の人たちの知恵と工夫から生まれたお酒。 「八海山雪室」は冬の間に降り積もった約1,000トンもの雪を蓄え、1年を通して3度前後という低温高湿な環境が安定的に保たれている「天然の冷蔵庫」です。その雪室に3年貯蔵することで、荒々しさや角がとれてまろやかな味わいが実現したそうです。
口に含むと確かに、香しいまろやかな甘みでスイスイ入ってしまいます…ところがこのお酒、他の八海山より2度も高い17度。これこそが、兼好師匠の「日本酒はこわい飲み物ですからねぇ。」の云わんとしていたことなのですね。でも本当に美味しいお酒。


八海山酒造の余田さん(左)とTYファームの太田さん(右)
兼好師匠のイラスト入りサイン色紙

抽選会も大盛況!!

最後の抽選会は、会場からどよめきや感嘆の声のあがり、大盛況!
八海山酒造さんからは、八海山入りのTシャツや升。TYファームさんからは、なんと朝採れ江戸東京野菜の詰め合わせ。そして兼好師匠からは、素敵なイラスト入りのサイン色紙が賞品に。 日頃ご贔屓に来場いただいている東寄席ファンのお客様にはこれまで以上のボリュームを感じていただけたことでしょう。それにしても、師匠の多才ぶりには本当に感服いたしました。
会場は抽選の番号が上がるたびに喜びの声が広がり、見知らぬお客様同士も「良かったわね!!」とご自身のように喜ぶ様子。会場はだれもが笑顔の絶えない賑わいでした。

次回は9/21(水)落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会「桂文治師匠の独演会」です。どうぞ、お楽しみに!

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