演舞場発 東寄席 第九回

演舞場発 東寄席 第九回 2015年11月16日

今回はここ東寄席で初開催となります二人会です。 高座を努めて頂きましたお二人は、二つ目で、話が面白く聴き応えのある若手成長株、桂宮治さんと入船亭小辰さんにご登壇いただきました。

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ここ地下食堂『東』で催す『演舞場発 文化を遊ぶ』とは次世代の日本文化を継承している若手で、特に近い将来その道を背負っていくであろう方々にスポットを当て、若手育成の場として噺家はもとより、新橋芸者衆、歌舞伎役者など実力のある方々にご登壇を頂いております。

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この日は二つ目のお若い二人をお招きし、落語だけをたっぷりと楽しむとして企画され、落語好きの皆様がと満席となるほどお集まりいただき、和やかな雰囲気でスタートしました。

お待ち頂く間、お弁当を注文された方も飲み放題のドリンクとともにお食事をお楽しみ頂きました。

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本日のお弁当は、「幕の内弁当 あおい」。海老に、つくね、唐揚げ、卵、豆は洋風にさわやかに仕立て、がんもには、おいしい出汁を含み 野菜を煮炊きしたものを、花柄を施した赤い扇の弁当箱に詰めました。
それから、折り詰めに入った稲荷寿しと干瓢巻きの「助六弁当」。

お食事を終えるころ、三味線と太鼓の軽快な音とともに桂宮治(かつらみやじ)さんが登場します。

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見るからに面白そうなことを言いそうなお顔立ちと雰囲気。
「落語より漫談が得意なんです」という宮治さんのテンポの良さや面白さに会場は一気に笑いの渦に引きこまれました。

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御年39歳の宮治さん。実はこの世界に興味を持たれたのが30歳を過ぎてから。
YouTubeの動画配信サービスを観たのをきっかけに落語に興味を持ち、結婚式のスピーチで当時勤めていた会社の社長に「会社を辞めます!」落語家になる宣言をしたという潔さ!

一見破天荒とも思える人生の選択は、正しかったといわんばかりに、会場は飽きる様子もなくいつまでも宮治さんのまわりで笑顔の耐えない雰囲気に包まれていました。

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いつもは浅草演芸ホールで定席を持たれているようで、演芸ホールの常連のお客様もいらしていたよう。

若手とは思えない観客の心の掴み方。けなすも落とすも、宮治さんのペースへと、一気に会場はひきこまれていきます。

かつては、六代目圓楽師匠の襲名披露を演舞場で行ったときに太鼓番で演舞場の裏方にいらしていたという桂宮治さん。新橋演舞場への久々の来訪は、こんなに大盛況の高座でした。

 

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まくらの部分でたっぷりと漫談を聞かせながら、いつのまにか、こわいかみさんを持つ間抜けな甚平さんの滑稽話へ。

宮治調に仕上がった「熊の皮」は、こわいかみさんも、間抜けな甚兵衛も、宮治さんがおひとりで演じていることも忘れるくらい、いろんな役どころが目白押す。落語が初めてという初心者の方から、常連のお客様までだれもが楽しめるお噺でした。

 

元気の良い宮治さんのあとに高座に立つのは、入船亭小辰(いりふねていこたつ)さん。

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桂宮治さんとは対照的で、落ち着いて飄々とした語り口で始まります。

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お二人ともはじめは若手らしく、名前を覚えて帰ってほしいという駆け出しではじまりますが、小辰さんは、事あるごとに
「入船亭こ、た、つ」と始めます。

そのうちそのテンポの良さに会場のお客様も一緒になって客席からも、入船亭と言われれば
「こ、た、つ」と合唱。

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こうなればおとなしいかとおもわれていた小辰さんのペースはお手の物。
これでもかと落語家の話やら、炬燵(こたつ)の話で盛り上がります。
宮治さんとは違う印象の一見物静かな小辰さんなのに、完全に会場は「こたつさん」を覚えてしまいます。

小辰さんの一席目は、火事息子。
「今は、落語家、アイドル、なりたいものになれる時代ですが、昔はそうはいかないもので」といって始まるこのお噺は、火消し屋のお噺です。

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長屋の家の多い時代、火事を見て憧れる人間はいたもので、火事好きが高じて火消しになりたいと勘当されて家を飛び出し火消し屋でも身分の低い「臥煙(がえん)」と呼ばれる体に彫り物をした、世間ではガラの悪い連中と言われていた男の話です。

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難しい演目です。
しんみりした中に笑いもある、聞きごたえのあるお噺ですが、若手といえども落ち着きのある小辰さんにはよく似合います。

宮治さんの勢いのある笑いとはまた一味違う入り込ませ方で、会場は時おり笑いがこぼれながらもしっかりと聞き入ります。
悲しくも臥煙の人生を歩んでしまったがために勘当された徳之助と、世間体を気にしながらも子を思う親の愛が浮かびます。

笑う落語と、泣ける落語。同じ落語でありながら、最後の落ちまでどこか会場をうならせる、そんな落語でした。

15分の休憩を挟んで、入船亭小辰さんの二席目。

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一席目とはがらりと変わり、間抜けな泥棒を描いた滑稽噺。

女役は色っぽく、間抜けな役はとても間抜けな姿に、会場は引き込まれ、終始大笑いに包まれました。

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宮治さんの二席目は、「蛙茶番」といったこれまた勢いのある滑稽話で、会場は大盛り上がりです。

小辰さんが冒頭で、「前座と真打ちの間である、面白いか面白くないかわからないような二つ目の落語にお金を使うなんて、みなさんギャンブラーだ」と洒落てらっしゃいましたが、今回の賭けは大当たり。
将来大物になると言われる若手噺家さんの落語を、まさにたっぷりと楽しめる会となりました。

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落語の後はお楽しみ抽選会が開催されました。
お二方のサイン入りの色紙がプレゼントされ、当選された皆さんも大変満足されたご様子でした。

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落語をたっぷり楽しむ二人会の夜、今回もネタ帳簿にまた新たに演目が続きました。
ここにはふたつとないあらゆる落語家の落語が集まります。
次回の落語はどんな落語が記帳されるのでしょう。

本日もお集まりいただきありがとうございました。

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