演舞場発 文化を遊ぶ 第九回
なでしこの踊り・早春2017
「演舞場発 文化を遊ぶ」として好評の、
東京新橋組合とのコラボレーション企画「なでしこの踊り」が
装いも新たに今春も開催されました。
今回より舞台を一新。鑑賞席とお食事席をそれぞれ設け、
これまでよりもさらに踊りを見やすくお楽しみ頂けるようになりました。
今回もたくさんのお客様にご来場いただき会場は満席。
リピーターのお客様のお姿も。ご夫婦やご家族でお越し下さった方も多く、
会場は和気藹々とした雰囲気です。
期待が高まる中、正装の芸者衆が舞台へあがります。
キリッとした黒の紋付衣装に会場が華やぎます。
やや緊張した面持ちで挨拶をする芸者衆を、
暖かく見守ってくださるお客様のまなざしが印象的でした。
一組目は左から、千代加さん、のりえさん、清乃さん、ちよ美さん。
二組目は左から、喜美弥さん、君二郎さん、小福さん、小花さん。
みどころ解説
芸者衆のおどりの前に、
大きいお姐さんの小喜美さん、加津代さんを招いた解説が始まります。
普段若手芸者衆の踊りの指導に当たられているお姐さんの各演目の解説と、所作の意味合いや踊りの背景や見どころをお話し頂きます。
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加津代さん
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小喜美さん
続いて衣装の解説へ。
今回のなでしこの踊りはのテーマは「早春」ということで、艶やかな新橋の新春の装いです。
着物は黒紋付の正装。女形の立方さんは帯に「ぶら」というアクセサリーを身につけ、 髪型は「つぶし島田」。稲穂に鳩の髪飾りは新年だけのもので『お客様をトリコメ、トリコメ』という意味を込めて付けます。かんざしには今では貴重なべっ甲や赤玉を差した、 縁起を担ぐ飾りをつけています。
男方の髪型は前が割れており、まげもありません。
「鬘下地(かずらしたじ)」と呼ぶそうです。
帯は後見結び。女方も結ぶことがあるそうですが、
新橋の男方の芸者さんが普段結んでいるものだそうです。
なでしこの踊り
初春
お正月のお座敷は必ずこの曲から始まります。
また、新橋の芸者になるための試験の課題曲でもあり、
大きなお姉さん曰く「これが踊れないと新橋の芸者にはなれません。」とのこと。
華やかさの中にも新橋の歴史の重みや芸者衆の想いがこもった一曲です。
梅のかずかず
いろいろな梅の種類を数えながら、咲きほころぶ娘の風情を梅に例えた踊りです。
春を喜ぶ女性の心境を描く一曲。数を数える仕草や愛らしい振り付けが印象的です。
初出とよみて
新橋花柳界の男方の伝統を感じさせる一曲です。
一月六日、江戸の火消しの初出式に、梯子に登って下を眺める粋な江戸の鳶頭を歌った小唄で、歌詞が振り付けを表しており演奏も楽しめる演目です。
文の便り
長唄「吉原雀」の一節で、手ぬぐいを文に見立て、吉原での男女を唄っています。
ラブレターを交わす恋人の様子を描いたお座敷らしいロマンチックな演目です。
花づくし
明治期に大流行したさのさ節。
今回はほろ酔い気分の芸者が、花の名を掛詞にのろけている様子を演じます。
加津代さんによる演目の解説では、「酔っ払った様子ならすぐできるんです、普段やっていますから。ただほろ酔いというのが難しい。そこを注目してご覧ください。」とお話しされ、会場を沸かせていました。
松づくし
松の名所を詠んだ数え歌で、端唄ながら「松」の品位に合わせた上品な曲です。
唄は韻を踏んでおり、歌詞を追ってみるのも楽しい一曲です。
奴さん ししは さわぎ
最後の曲は、江戸の頃からの端唄メドレーです。
賑やかな正月座敷の風情で締めくくります。
新橋の正月は「初春」からはじまり、
この「奴さん ししは さわぎ」で終わるというのが新橋の伝統です。
お食事
新橋の新春の風情を感じて頂いたところでお食事がはじまります。
今回からは、お食事席へ移動して頂き、ゆっくりとお召し上がり頂けるようになりました。
新橋の料亭の流れをくむ新橋演舞場の特別会席弁当をお楽しみいただきます。
今回は「なでしこの踊り 早春」のテーマに合わせた、
独活や穂付筍、蕗などの春らしい食材や、梅をあしらった甘味の紅梅など、
お料理からも新春の風情を感じて頂けるお料理をご用意しました。
踊りを終えたばかりの芸者衆も、挨拶に伺いながらお酒をお勧めにまわります。
お座敷遊び 虎けん
お食事のあとは、お待ちかねのお座敷遊び体験です。
今回はお客様の中から3名の方に、お座敷遊びの定番「虎けん」をお楽しみ頂きました。
惜しくも虎けんに参加できず残念がるお客様を、地方のお姐さんがたが舞台へと案内し、一緒に唄う一幕も。和やかな雰囲気に会場も一層盛り上がります。
また、こちらも恒例となったプレゼントじゃんけん大会も大いに盛り上がりました。
今回は『獅子は(せつほんかいな)』のCDを5名のお客様にお持ち帰り頂きました。
最後は芸者衆とお姐さん方からのご挨拶と手締めで締めくくります。
「三月、弥生の一日からこのような楽しい会にして頂けたのも皆様のおかげです。
5月の東をどり、9月の次回なでしこの踊りもどうぞ宜しくお願い致します。
ありがとうございました。」と丁寧にお辞儀をする芸者衆に会場からは大きな拍手が起こります。
手締めについては、大きいお姉さんの加津代が解説してくださいます。
三が三回で「九」になり、それでは縁起がよろしくないので、
そこに一を足すことで「丸」になる。丸くおさまり平和になりますように、
という縁起のいいお祝いの締めで今回のなでしこの踊りは無事終了いたしました。