演舞場発 東寄席 第三十三回 2017年11月27日(月)
第三十三回『落語と焼酎と伝統野菜を楽しむ会in新橋演舞場』にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。
朝夕の冷たい風が身に染みる季節。本格的な冬はすぐそこまで来ていますね。
三十三回目を迎えた今回は、新橋演舞場地下『東寄席』には三回目のご出演となります、古今亭文菊師匠に高座をお勤め頂きました。
また今回は初の試みとして、宮崎県の京屋酒造さんをお招きし、横綱・白鵬関にもその美味しさをテレビで絶賛された芋焼酎「甕雫」をはじめ、こだわりの焼酎をお楽しみ頂きました。それでは振り返りご紹介いたします。
味覚を楽しむ
本日の演舞場のお料理
文菊師匠の噺と京屋酒造の美味しい蒸留酒をご堪能頂きつつ、召し上がっていただくのは、 料亭「金田中」で修行をし、「マツコの知らない世界」でも紹介された斎藤料理長によるお料理。 先付けにはT.Y.FARM改めOme Farm栽培、キメの細かい大蔵大根を使用したふろふき大根。 八寸には、烏賊の塩辛、海老芝煮、蛸と野沢菜は山葵で和えてさっぱりと。 小鯛西京焼き、鳥松前風、博多チーズ、白子豆腐。 焼酎を楽しむ会では、酒のマヨネーズ焼き、菊蕪甘酢漬けに大蔵大根葉の油炒めで 焼酎のクリアな味わいを引き立てます。 御食事には木の子ご飯、菊花真丈と松茸のお吸い物。水菓子にはりんごと抹茶葛餅を。 季節の食材を使用した晩秋を感じさせる献立をご用意いたしました。
江戸東京野菜を楽しむ
Ome Farm 「大蔵大根」
『東寄席』ではすでにお馴染みのT.Y.FARMさん。
12月より社名を変更し「Ome Farm」として、今回も美味しいお野菜をご提供頂きました。
本日の持ち頂いたのは「大蔵大根」。世田谷区で栽培されている、今が旬の江戸東京野菜です。
病気に強く栽培しやすい青首大根の普及により、少しずつ作る農家の方が減ってきたのだそうです。
肉質が緻密で、柔らかく煮ても煮崩れしないという大蔵大根を、本日は「ふろふき大根」で召し上がって頂きました。
上品なお出汁で柔らかく炊かれたお大根に、甘辛のお味噌を添えた、冬の訪れを感じさせる一品です。
肩のはった「ずんっ」とした形はおでんにも最適とのこと。
本日は、油炒めで皮や葉まで余すところなく頂きます。
江戸野菜らしい力強い風味にお酒も進みます。
落語を楽しむ
開口一番『道灌』柳家小多け
開口一番は、来年3月に二つ目昇進の決まった注目の若手噺家、柳家小多けさんにお勤め頂きました。 柳家小里ん師匠のお弟子さんです。演目は「道灌」。 戦国初期の有名な風流武将、太田道灌のある「山吹の里」の伝説をもとに繰り広げられる古典落語です。 小多けさんのフレッシュな風貌と軽快な語り口で会場を温めます。
一席目『夢の酒』古今亭文菊
続いては盛大な拍手の中、皆様お待ちかね、古今亭文菊師匠の登場です。 「落語ブームといえど、お客様の平均年齢は高い..」と会場をほぐしつつ、 「落語は想像をして頂く芸能、教養ある大人の遊びである」と、気の利いた一言でさらに盛り上げます。
演目は「落語と焼酎と伝統野菜を楽しむ」にふさわしい古典落語「夢の酒」。 寒い冬の日、こたつでうたた寝をする若主人。 向島の絶世の美女に酒を勧められ、一晩を共にする寸前で目が覚めてしまいます。 夢の内容に嫉妬し泣き止まない妻は、仲裁に入った大旦那に 「夢の中の女にお小言を行ってきてほしい」を頼むが...
幻想的で艶っぽいこの演目は、 安永3年に出版された「仕方咄」の一遍である『夢』を原話にした古典落語です。 夢と現実が入り混じる落語演目は数あれど、その中でもとても叙情的なストーリーは、 まさに「想像力を掻き立てる、大人のための芸能」。 色気たっぷりに登場人物を演じ分ける文菊師匠に会場中が酔いしれました。
〜仲入り〜
二席目『宿屋の富』古今亭文菊
美味しい酒と美味しい料理を堪能して頂いた仲入りの後、文菊師匠二席目は、 上方発祥の演目「宿屋の富」。 上方落語では『高津の富(こうづのとみ)』と言い高津神社が舞台ですが、 江戸版では、湯島天神および日本橋馬喰町の宿屋を舞台にしています。 流行らない宿屋にやってきた一人の男。 「金が邪魔でしょうがない」と豪語する男(実はエセ金持ちなのですが...)に、 副業として取り扱っている富くじを売りつけるところから始まるナンセンスな物語。
軽快でユーモア溢れるストーリー展開の中に、文菊師匠の細やかな描写が光ります。
特に湯島天神での富の抽選の場面では、群衆のざわめき、温度、匂いまでも伝わってくるようです。
会場は大変に盛り上がり、拍手拍手の大盛況で幕を閉じました。
お酒を楽しむ
『東寄席』初となる焼酎・蒸留酒をお持ち頂いたのは、 天保五年(1834年)より宮崎県で焼酎を製造している京屋酒造さん。 原料にこだわり、大甕にて少量ずつ丹精込めて焼酎を造っています。 希少な焼酎にお客様も興味津々です。
『ヘベスクール(宮崎固有柑橘 平兵衛酢使用)ソーダ割り』
食前酒として供されたのは、日向特産の平兵衛酢(ヘベス)という柑橘類を丹念に選別し、独自の製法でつけ込んだものを、芋焼酎の原酒をブレンドしたすっきりとした味わいのリキュール。
運ばれてきたへべスクールをテーブルにセットされた炭酸水でお好みの濃さに割って頂きます。フレッシュな香りと爽快な飲み口で、会場に到着したばかりのお客様の喉を潤します。
『天保の蔵 甘露 薄にごり 新酒(前割り)燗』
お燗で登場したのは「薄にごり 天保の蔵 甘露」。
高温蒸留、最小限の濾過で製造されているため、うっすらと濁った色合いです。
お燗で頂く事によって芋焼酎本来の香り甘みをさらに引き立てます。 宮崎県産の紅寿芋を使用した香り高いお酒にお客様の顔もほころびます。
※前割りとは、あらかじめ焼酎と水を好みの割合に混ぜ合わせて数日間寝かせたもの。
まろやかで飲みやすくなる、焼酎好きの間では良く知られた手法です。
『空と風と大地と 米麹山田錦使用(前割)冷』
原料にこだわる京屋酒造では、米麹に100%国内産のお米を使用しています。 その中でもこの「空を風と大地と」は山田錦を贅沢に使用したまろやかで深い味わいのお酒です。 こちらは冷やでキリっと頂きます。 まろやかでありながらスッキリとした口当たりをお楽しみいただきました。
『甕雫 丸ごおりオンザロック』
京屋酒造の代表作、甕雫をロックでいただきます。
農薬を使用せず有機肥料を用いて栽培された宮崎紅寿芋を一部、原料に使用した本格焼酎です。
芋焼酎でありながら、女性でもすいすいと飲めてしまうフルーティさにお客様のお酒も進み、宴をさらに盛り上げます。
お楽しみ抽選会
落語と美味しいお食事・お酒を味わって頂いた後は、宴の後のお楽しみ、抽選会です。 Ome Farmさんからは、3000円相当のお野菜お届けセット、 今回初登場してくださった京屋酒造さんからは前掛けをプレゼント。 文菊師匠のサイン色紙や演舞場からはイベントチケットなど、番号が読み上げられるたびに、 会場からは大きな歓声が上がり、さながら本日の演目「宿屋の富」のワンシーンを 彷彿とさせる盛り上がりをみせ、熱気冷めやらぬ内にお開きとなりました。
今回も満員御礼となりました『東寄席』。
何度も足を運んで頂いているお客様や、お友達・ご家族を連れていらした常連様、「前回もいらっしゃいましたよね?」と、隣り合ったお客様同士お話されている姿も見られ、新橋演舞場地下『東寄席』をご愛顧頂き、輪が広がっていることを関係者一同大変嬉しく思います。
初めてのお客様もお気軽にお越しくださいませ。落語を美味しいお酒と共に身近に楽しんで頂ければ幸いです。
次回は 2017年12月26日(火) 、風間杜夫さんの独演会です。どうぞお楽しみに。