演舞場発 東寄席 第五十二回 2019年4月29日(月)
第五十二回『落語と日本酒と伝統野菜を楽しむ会』にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。
風にそよぐ木々の緑もまぶしい季節となりました。
平成最後の会となる今宵は、桂三四郎さんと桂三度さんによる東寄席初の兄弟会が行われました。
お食事は、新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意させていただきました。
本日のお料理と共にお楽しみいただくお酒は、神奈川県の大矢孝酒造店の残草蓬萊(ざるそうほうらい)です。
それでは振り返りをご紹介いたします。
演舞場の味覚を楽しむ
本日の演舞場のお料理
高座と日本酒を楽しみながらお召し上がりいただくお料理は、新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意させていただきました。
先付けは後関晩生小松菜の胡麻和え。
八寸には烏賊の塩辛、牛時雨煮、自家製だし巻き玉子、あぶり蛤串刺し、花蓮根甘酢漬け、豚ロース野菜巻、やわらか鶏むね肉ハニーマスタード添え。
煮物は、蒟蒻、明月がんも、牛蒡、筍、花人参、ブロッコリー。向付に鮪、鯛、甘海老。
主菜は三元豚のバラ肉京西焼。
茶そばの後は、さくらジェラートをお召し上がりいただきました。
落語を楽しむ
一席目「かずとも」
一席目は桂三四郎さん。東寄席には今回で2度目のご登壇です。
東京に出てきて8年目の三四郎さん。関東と関西の人に対する距離の違いを、テンポよくお話しされます。
「関東の人は上品な方が多いですね」と語る三四郎さん。しかし、その上品さが返って距離感を感じて少しさびしいとはじめます。
「関西人はどんどんどんどん距離をつめてくる」と言って、身振り手振りで詰め寄る関西人をネタに会場を盛り上げます。
大人も子どもも詰め寄るスタイルの関西人。のっけから会場は抱腹絶倒。気づけばすっかり三四郎さんのテンポに飲み込まれるうちに演目がはじまります。
「かずとも」は、はじめてお葬式を体験する男の子の物語。
はじめての事だらけのお葬式で、お母さんに「ねえねえ」と質問するかずともと、周りの大人達が繰り広げるドタバタ劇。
三四郎さんの演じるかずともから、予測できない奇想天外な行動が次々と繰り出されるたび、大きな笑い声が響きます。
怒られてばかりのかずともですが、最後はじーんと心に響く一言で締めくくり、会場からは温かい拍手が溢れました。
二席目「隣の空き地」
会場の空気があたたまったころ、二席目の桂三度さんのご登場です。
「落語はネタが長い気がする、と言われるのが辛い」から始まった枕では、「時うどん」(江戸落語では「時そば」)を筆頭に、映画タイタニックや男はつらいよなどの名作を、内容をぎゅっと短くご紹介。
紹介されるたび、会場からはなるほどといった拍手と笑い声が。
会場の空気をぐっと掴んだところで、演目「隣の空き地」が始まります。
「隣の空き地に塀が出来たよ 」「へぇ〜」という小噺を映画のように長 くしてみた、という噺。
ことば遊びをしたい先輩と、それに応えられない勘の悪い後輩のやりとりに、会場はどんどん引き込まれていきます。
軽快なリズムで繰り広げられる二人の会話は、思わぬ方向に...。
あまりにも勘が悪い後輩を前に、会場の空気も先輩に同情しはじめるほど。ハラハラしながら進むお噺ですが、最後のオチでは大きな拍手で幕を閉じました。
〜仲入り〜
三席目「青菜」
お囃子とともに会場から拍手が溢れます。三度さんが登場されると「待ってました!」との声が。
新緑が青々と茂りだした初夏の夜「暑いからといって薄着には気をつけてくださいね」といいながら始まった枕では、三度さんがこれまで
目にしたおかしな服装の話でわかせます。
会場の笑いを誘ったところで始まったのは、これからの季節にぴったりの演目「青菜」。
あるお屋敷に仕える植木屋が、主人のお酒の相手をすることに。贅沢なお酒と料理を楽しんでいる中、屋敷の主人と奥様とのやり取りに感心した植木屋は、自宅に帰りさっそく真似てみようとするのですが...。
青菜は江戸でも知れた有名な古典の噺ですが、もとは上方で愛された演目のひとつ。西の味の染み込む三度さんの演じるひょうきんな植木屋、登場人物を演じきる姿に、会場はすっかり魅了されていました。
四席目「竹の水仙」
会場もほろ酔いの中、大きな拍手とともに登場されたのは、最後の一席を飾っていただく桂三四郎さん。
海外公演も行っいる三四郎さん。入国審査が厳しいアメリカでの出来事をネタに、ほろ酔いのお客様をどっと沸かせます。
最後の一席は「竹の水仙」。噺に登場する名工、左甚五郎と創作落語の名人である桂文枝を紐づけ、師匠の裏話を紹介。「名人というのは変わっている人が多いのですが...」と始まり、「落語家に向いていない」と言われたことがあると自虐ネタへ。会場が笑いに包まれたところでスッと演目へ。
天下の名工の左甚五郎が江戸へ下る途中、名を隠して旅籠に長逗留したとのこと。朝から晩まで酒を飲み贅沢をするので、旅館の亭主は困ってしまい、一度勘定をしようとするのですが...
ユーモアたっぷりにすすむお噺と、三四郎さんの演じるキャラクターに、会場はすっかり魅了されます。落語の中でも残草蓬莱が登場するサービスぷりで、会場は大盛り上がりで幕を閉じました。
江戸伝統野菜を楽しむ
本日も、江戸東京野菜コンシェルジュの資格を持つOmeFarmの島田さんが、美味しいお野菜をご紹介くださいました。
本日の江戸伝統野菜は、先付けに胡麻和えとして出された後関晩生小松菜。
こちらは通常の小松菜とは違い、高菜のような青臭さが残る、昔ながらの小松菜です。
青菜自体の味がしっかりとしており、シャキシャキした食感も楽しめるため、お浸しや和え物にぴったりのお野菜です。
お酒を楽しむ
今宵のお酒を提供していただいた大矢孝酒造さんを紹介してくれるのは、神奈川県厚木市でお店を営み100周年を迎える 望月酒店さん。
「落語とともに、残草蓬莱を飲んだなぁという気持ちで、愛着をもって帰ってくださると嬉しい」と挨拶されると、会場からは、温かい拍手がおこります。
続いて大矢孝酒造さんが、お酒の解説をしてくださいます。
大矢孝酒造さんは創業1830年。今年で189年目を迎えられ、純米酒のみを作っている数少ない酒蔵さんです。
日本酒1合で、お米1合と同じくらいお米を使用している日本酒。
日本では年々お米の消費量が減っており、純米酒を飲むということは日本の農業の発展にもなるので、ぜひ楽しんでいただきたいとお話いただきました。
(写真右から)
昇龍蓬莱 特別純米
爽やかな酸味と熟成酒の風味が感じられる、食事によく合う熟成酒です。
残草蓬莱 純米吟醸
お米を半分まで削った、少しプレミアムな生原酒です。
フルーティーながらも、少し酸味を感じられるスッキリとした味わい。
昇龍蓬莱 生もと純米
新酒のフレッシュさを持ち合わせながらも、しっかりとした味のプレミアムなお酒です。
残草蓬莱 純米吟醸
絞ったばかりの生原酒。ガツンとした旨味と、甘みを楽しめるお酒です。
お楽しみ抽選会
落語会の余韻に会場の熱気は冷めやりません。美味しいお酒とお料理で、お客様同士の距離もぐっと縮まります。
最後は東寄席恒例の「お楽しみ抽選会」です。
OmeFarmさんからは、ワサビ菜、ルッコラ、珍しいケールなどが入った野菜セットを。
大矢孝酒造さんからはオリジナルの前掛け、桂三四郎さん、桂三度さんからは、サイン入り色紙。
演舞場からはサイン入りポスターが贈られました。
今回も満員御礼となりました、大盛況のうちに幕を閉じた『東寄席』。
次回は2019年5月29日(水)、柳家権太楼師匠の登場です!どうぞお楽しみに!