演舞場発 東寄席 第六十八回 2020年1月29日(水)
第六十八回東寄席、『落語と日本酒と有機無農薬野菜を楽しむ会』にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。
昨日は大雨にともない冷え込む一日でしたが、今宵は一転、日中は春の陽気となりました。
今宵、高座にお迎えしたのは東寄席六度目のご出演、春風亭一之輔師匠です。
東寄席に初期の頃からご出演いただき、人気、実力ともに一流の一之輔師匠のご登壇に、満員御礼、新年一回目にふさわしい華やかな会となりました。
お料理と共にお楽しみいただいたお酒は、初めてのご紹介、長野のEH酒造さんです。
それでは振り返りをご紹介いたします。
演舞場の味覚を楽しむ
本日の演舞場のお料理
高座と日本酒を楽しみながらお召し上がりいただくお料理は、新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意させていただきました。
先付けには、蒸しバターナッツ南瓜。
八寸には、玉子焼、筍と蕗の白和え、花蓮根甘酢漬け、蛸とキャベツのメンチカツ、辛子蓮根玄米衣揚、つくね団子串刺し、豚タン下肉の生姜焼き、紅白なます、鶏手羽餃子揚。
煮物に一口さつま揚、蒟蒻、里芋、ブロッコリー、花人参。
向付は鮪と鯛の刺身をご用意しました。
主菜はさばの味噌煮にほうれん草の胡麻和え添え。
わかめのかき揚げ天茶そばのあとには、ふわふわのロールケーキとオレンジをお召し上がりいただきました。
落語を楽しむ
開口一番『狸札』春風亭いっ休
本日の開口一番をお勤めいただいたのは、一之輔師匠の三番弟子である春風亭いっ休さん。
ご披露いただいた演目は『狸札』。
子供にいじめられていた子狸が、助けてくれた男のもとへと恩返しに。優しいながらもぶっきらぼうな男は、礼などいらないと子狸を追い返しますが……。
童話のような素朴な噺ですが、いっ休さんの澄んだお声で可愛らしく演じられる狸に、客席からは笑いが溢れました。
一席目『干物箱』春風亭一之輔
拍手万雷、春風亭一之輔師匠のご登壇です。
ところで、優れた噺家さんの毒気のある言葉にはいつも感心させられます。「毒気」という表現が適さないのかもしれませんが、師匠たちのそうした言葉はいつも親しみ深く、客席との距離をぐっと縮められます。
そうしたことを改めて感じさせてくれた一之輔師匠が枕に続きご披露くださった一席目は『干物箱』。
煩悩にまみれた伊勢屋の若旦那が、とてもそんなことをして良い状況ではないのに、つい遊びに出かけてしまう。
どうしようもない人物の悪行ですが、師匠による躍動感に溢れた活写に客席は笑いとともに親しみを覚えてしまう。
そして、枕でお話しされたことが緩やかに『干物箱』へとつながっていたことに気づかされます。
現代のわかりやすい勧善懲悪による閉塞感。優れた噺家の芸はそうしたものへのデトックスにもなるのかと大いに感じ入りました。
〜仲入り〜
二席目『味噌蔵』春風亭一之輔
仲入りをはさみ、ふたたびの大きな拍手の中ご登壇された一之輔師匠。
リラックスしたムードを保ちつつ始められた二席目は『味噌蔵』。
一之輔師匠による現代風のアレンジは絶品で、その白眉は番頭さんが「カツ煮」について語る場面でしょうか。番頭さんの「カツ煮」への熱い想いに、ぐっと親近感が湧き、さらに一段、噺に引き込まれます。
もちろん、それに負けず劣らずの場面の連続に客席は抱腹絶倒。
最後には名残惜しさの混じった客席からの喝采の中、新年一回目の落語会はお開きとなりました。
江戸伝統野菜を楽しむ
本日も、江戸東京野菜コンシェルジュの資格を持つOmeFarmの島田さんが、美味しい有機無農薬野菜をご紹介くださいました。
本日の野菜はバターナッツ南瓜。
南米で品種改良され生まれたバターナッツ南瓜は最近、人気が急上昇中とのこと。そんな折、島田さんは写真右の一般的なバターナッツ南瓜ではなく、ひときわ大きい品種のものをお持ちくださりました。
水分が多く煮ることに適していないため、本日はシンプルに蒸すことでバターナッツ南瓜の持つ独特の甘みをお楽しみ頂きました。
お酒を楽しむ
今宵のお酒を提供していただいたのは、長野・安曇野のEH酒造さん。
創業は二〇〇三年とあたらしい蔵元ですが、安曇野の地で江戸時代末期より続く酒蔵「酔園」の伝統を受け継いだ酒造りを行っています。
(写真右から)
酔園 幻の酒ブルー 純米吟醸
安曇野で育った「ひとごこち」を使ったバランスに優れた純米吟醸。
雪乃酒 吟醸にごり
お米の甘みを活かしつつ、すっきりとした味わいが特徴。
深江蔵 無濾過純米吟醸
搾りたてのフレッシュさを残した、飲みごたえのある一品。
大吟醸 鬼かん
少量仕込みのこだわりの大吟醸。
お楽しみ抽選会
最後は東寄席恒例の「お楽しみ抽選会」です。
演舞場からは春風亭一之輔師匠のサイン入りポスター。OmeFarmさんからはお届けお野菜のセット。EH酒造さんからは各種日本酒。そして一之輔師匠からは素敵な色紙をご提供いただきました。
今回も満員御礼、大盛況のうちに幕を閉じた『東寄席』。
次回もどうぞお楽しみに!